高校生の頃に同じクラスのO君が気になっていた。
彼は他のクラスメイトとは違う、いつも何か憂鬱そうで人生に満足していないような目で窓の外を見つめていた。
私はその姿をみてなぜか強く惹かれるものがあった。
私も私の人生に全然満足してなかったからだ。
周りの友達が話している話題は流行りのドラマの話か好きな漫画の話かあり得ることのない芸能人との恋愛話。
全く興味がなかった。
私には誰にも言ったことのない将来の夢があった。
会計士になることだ。
私の家は極端に貧乏で小さい頃から惨めな思いをしてきた。
私の父の口癖は決まって”金が物を言う”だった。
私は会計士が稼げる仕事なのを随分前から知っていた。
だから誰よりも勉強して今こうして遊びまくっている奴らを見下してやろうと思ってやってきた。
でもO君にだけはそれが通用しそうになかった。
彼はクラスメイト達などもはや眼中になかったのだ。
彼は一匹狼だった。
態度こそ中々悪だったが成績はずば抜けてよかった。
そんな彼を私は目で追わずにはいられなかった。
何を考えているのか、何が好きで嫌いなのか興味がつきなかった。
けれど私は恋愛など浮かれた事をしている暇などないと自分を制してこの気持ちを伝えきれずに卒業をした。
それから私は会計士を目指していたものの、今の旦那と出会い、普通の一般家庭の主婦として二人の子供をもち平凡に暮らしていた。
月日が経ち、丁度私が40になった時、私はFacebookで偶然彼の名前を見つけた。
彼のプロフィールを見た瞬間、私は思わず声を上げてしまった。
彼はなんと会計士になって彼自身の会社を立ち上げていたのだった。
私はあの頃感じた彼との類似点が確信に変わったのを感じた。
私の指は勝手に彼に勝手にメッセージを送っていた。
返事をドキドキしながら待っていると思いの外すぐに帰ってきた。
会って話したいと伝えると是非!との返事。
私は人妻にも関わらず最近で一番いい格好をしなぜか淡い期待をもち彼との食事をした。
今彼とは数ヶ月に一回会っているが私はあの時感じた運命を今でももち続けている。
彼も奥さんがいるらしいのだがあまり関係が良くないらしく私に愚痴ばかりこぼす。
私も主人のだらしなさや酒癖の悪さ、マザコンな性格に呆れていたのでO君の相変わらずの大人びたその瞳に惹かれてしまうのだ。